教育評論家・法政大学名誉教授
尾木 直樹
1980年代半ばにいじめが大きな社会問題となってから、およそ40年が経ちました。その間にも、いじめによってかけがえのない命が失われる悲しい出来事が繰り返され、子どもの自殺者数も過去最多を更新し続けています。今なお、多くの子どもたちがいじめによって傷つき、苦しんでいる現実があります。
今日のいじめは、スマホ・SNSの普及によって、かつてないほど複雑化し、大人の目が届きにくくなっています。子どもたちは24時間365日いじめから逃れることができず、被害者と加害者の立場が入れ替わることも珍しくありません。だからこそ、「いじめられる側にも原因がある」という誤った見方をなくし、「いじめは100%いじめる側が悪い」という大前提を社会全体で共有し、被害者に徹底的に寄り添うことが何より重要です。
一方で、近年のいじめ対応を見ていると、学校や教育委員会だけでなく、私たち大人の感度や行動力が弱まっているようにも感じます。子どもたちのSOSに耳を傾け、迅速に行動する姿勢がこれまで以上に求められています。
2023年に「こども基本法」が制定され、子どもを権利の主体として尊重する社会づくりが進みはじめた今こそ、いじめ問題も新たな一歩を踏み出す時です。その鍵を握るのが、首長の皆さんです。子どもたちをいじめから守るという強い決意のもと、現場の声、とりわけ子どもたちの声に真摯に耳を傾け、学校や教育委員会、地域と力を合わせて取り組んでいただきたいと思います。
いじめ問題のスペシャリストは、現場にいる子どもたちです。子どもに学び、誰一人取り残さない地域をつくる。そのためのリーダーシップを発揮していただきたいと願っています。子どもを守ることは、地域の未来を守ることです。この会が全国の首長の皆さんをつなぎ、互いに学び合い、それぞれの地域に根ざした子どもたちを守る取り組みが生まれ、全国へ広がることを期待しています。
2026年7月17日